デザインのクオリティを左右する大きな要素のひとつが「色」です。
色は単なる見た目の美しさを決めるだけでなく、情報の伝わり方やユーザーの印象、さらには行動喚起にも大きく影響します。
そのため、どんなデザインにおいても配色の基本を理解し、実践できることは非常に重要です。
本記事では、配色の基礎知識から、実際のデザインで役立つテクニック、さらに迷った時の対処法まで、具体例を交えて解説していきます。
初心者の方でも実務で活用できる内容になっていますので、ぜひ最後まで読み進めてください。
色の組み合わせの基本
1. 類似色で統一感を出す
類似色とは、色相環で隣り合う色や、明度・彩度が近い色のことです。
この組み合わせを使うと、全体にまとまりが出て、落ち着いた印象を与えられます。
例えば、企業サイトの背景やメインカラーと相性の良い色を選ぶ場合、類似色を使うと統一感のあるデザインになります。
・オレンジ × 黄色:温かみや明るさを演出 例
類似色は、ブランドカラーを中心にした統一感のある配色を作るのに最適です。
広告やバナーなどでも、類似色を使うことで情報が整理され、読み手にストレスなく伝えられます。
2. 補色でメリハリをつける
補色は色相環で正反対に位置する色です。
互いに引き立て合う効果があるため、アクセントや目立たせたい要素に使うと効果的です。
例えばキャンペーンバナーで重要なメッセージを目立たせたいとき、補色を取り入れることで自然と視線を誘導できます。
・紫 × 黄緑:個性的でインパクトの強い配色 例
ただし、補色は使いすぎると全体が強調されすぎて落ち着かない印象になるため、適度にバランスをとることが重要です。
配色を決めるときに意識すべき7つのルール
1. 色数は3色以内に抑える
配色は基本的に3色までにすると、視覚的に情報が整理され、重要なポイントが伝わりやすくなります。
色数が増えすぎると、どこに注目してほしいのかが分かりにくくなり、情報が分散してしまいます。
3色以上使う場合でも、以下のポイントを意識すれば統一感を損なわずに配色できます。
・同じ要素で複数色を繰り返す
・一部のデザインに限定して使用
例えば、企業のWebサイトで背景、ボタン、テキストを3色以内でまとめると、ユーザーが自然に重要情報を把握できます。
2. 70:25:5の法則でバランスを整える
デザインの中で色の面積比を意識すると、自然で美しい配色が作れます。
「ベースカラー70%」「メインカラー25%」「アクセントカラー5%」の比率で配置することで、デザイン全体のバランスが整います。
・メインカラー(25%) 主役となる色で、ユーザーの目に留めたい要素に使用
・アクセントカラー(5%) 強調や注目を集めたい箇所に使用し、メリハリをつける
この比率を守るだけで、情報が整理され、ユーザーが自然と目を向けるデザインになります。
3. 真っ黒・真っ白は避ける
真っ黒や真っ白はコントラストが強く、長時間見ると目が疲れやすくなります。また、デザイン全体が硬く冷たい印象になりやすいため注意が必要です。
黒は少しグレー寄りに、白はほんのり色を足すだけでも、柔らかく自然な印象に仕上げることができます。
実務では、文字の可読性を維持しつつ、ユーザーに優しい見え方を意識しましょう。
4. 純色は控えめに
彩度・明度100%の純色は目立ちますが、組み合わせ次第で全体が強すぎる印象になり、デザインの意図が伝わりにくくなることがあります。
長時間見ても目が疲れないよう、彩度や明度を少し下げるだけで印象がぐっと柔らかくなり、バランスの取れた配色になります。
5. トーンを揃える
トーンとは、明度と彩度のバランスのことです。
同じトーンでまとめることで、統一感のある落ち着いたデザインに仕上がります。
Webサイトやアプリでは、背景・文字・装飾のトーンを揃えることで、ユーザーが情報を整理して理解しやすくなります。
6. 色のイメージを意識する
色には心理的なイメージがあります。色を効果的に使うことで、ターゲットに対して印象や感情を誘導できます。
・青:落ち着き、信頼、冷静
・緑:安心感、自然、安定
・黄色:明るさ、楽しさ、注意喚起
例えば、飲食店の広告では赤やオレンジを使うと食欲を刺激でき、金融系サイトでは青やグレーで信頼感を演出できます。
7. ターゲットを明確にする
配色を決める際には、誰に向けたデザインなのかを明確にすることが重要です。
年齢層や性別、興味・関心に応じた色選びを行うことで、ターゲットに刺さるデザインが作れます。
例えば、若年層向けのSNS広告ならビビッドな色を、ビジネス向けなら落ち着いたトーンを選ぶと、目的に合った印象を与えられます。
配色で迷ったときの3つの方法
1. 配色ツールを活用する
Web上には、配色のアイデアを自動で提案してくれる無料ツールが多数あります。
「Adobe Color」や「Coolors」「Colormind」などのツールを使えば、メインカラーを選ぶだけでバランスの取れたカラーパレットを自動生成してくれます。
また、彩度・明度・トーンの微調整が簡単にできるため、初心者でも直感的に使いやすいのが特徴です。
さらに、これらのツールは配色理論(補色・類似色・トライアドなど)をもとに設計されているため、自然と“理にかなった配色”を身につける練習にもなります。
まずは自分が「心地いい」と感じる色の組み合わせを保存しておき、実際のデザインで試してみると、感覚と理論の両方が磨かれていきます。
2. 参考資料や書籍を確認する
センスの良い配色を学ぶには、実例をたくさん見ることが一番の近道です。
実際のデザインでどんな色の組み合わせが使われているかを分析すると、「なぜこの色が心地よく見えるのか」が少しずつ理解できるようになります。
特に書籍は、Webよりも構成が体系的で、色の面積比・配色パターン・心理効果などを詳しく学べるのが魅力です。
・「COLOR DESIGN カラー別配色デザインブック」 おすすめ書籍
これらは、初心者から中級者まで参考になる定番書籍です。
このような資料を繰り返し眺めるうちに、「配色センス」は自然と身についていきます。気に入ったページをスクラップしたり、自分なりにアレンジして再現してみるのもおすすめです。
3. 日常生活からヒントを得る
センスを磨くうえで忘れてはいけないのが、日常にある“自然の色”から学ぶことです。
青空と雲のコントラスト、夕焼けと街の影のバランス、花や服、カフェのインテリアまで、私たちの身の回りには無数の色の組み合わせが存在しています。
自然界の配色は、偶然のようでいて非常に計算されています。
たとえば、海の青と砂浜のベージュ、木々の緑と空の淡いグラデーションなどは、どれも人の目にやさしく調和して見えるものばかりです。
そうした「自然がつくる美しい配色」を意識して観察すると、色の組み合わせ方やトーンのバランス感覚が少しずつ鍛えられていきます。
さらに、街中のポスターや商品パッケージなども良い教材になります。
「なぜこの色使いが目を引くのか」「どんな印象を与えているのか」を考えながら観察することで、実践的な配色センスを身につけることができます。
まとめ
配色はデザインの印象を大きく左右する重要な要素です。
今回紹介した基本ルールとテクニックを押さえることで、初心者でもターゲットに伝わる、説得力のあるデザインが作れるようになります。
・色の基本要素:色相・彩度・明度
・色の組み合わせ:類似色・補色
・配色ルール7選:色は3色以内/70:25:5の法則/真っ黒・真っ白は避ける/純色は控えめ/トーンを揃える/色のイメージ/ターゲットを意識
・配色に迷ったとき:配色ツール/参考資料/日常生活からヒント ポイントの復習
これらを意識するだけで、デザイン全体の統一感や説得力はぐっと高まります。
色の選び方ひとつで、印象や伝わり方は大きく変わるもの。
日常の中でも「この配色、いいな」と感じた瞬間を意識して観察することで、感覚は少しずつ研ぎ澄まされていきます。
実務でもプライベートでも、色と向き合う時間を増やしながら、自分らしい配色センスを育てていきましょう。